2022-04-30

WWOOF en Hautes-Alpes à l’été 2010

Eourres, France

Camping Mandalaから次のホストの元へ行く時にちょっとしたトラブルがあった。約束の場所でホストとすれ違い、会えなかったのだ。ホストの1人に電話をして繋がったが、言葉が聞き取れずに途方に暮れていた時、同じ村に住んでいるという女性に出会った。彼女はマルシェに出店しに来ていたらしく、一緒にカフェでお茶をしてから、彼女がEourresに帰るタイミングで車に乗せてもらうことになった。以前からWWOOFの受け入れをしている彼らのことをよく知っているようだった。実はメールでのやり取りの時から少しだけズレを感じたことがあったのも気のせいではなく、その原因は後から知ることになる。そのため、1ヶ月の滞在予定を切り上げて1週間で離れることになったのだけれど、その期間の出会いが素晴らしくて、またも濃密な時間となった。

まずは、ホストの恋人のマリーが素敵な人だった。元々WWOOFerとしてやって来たとのこと。彼のお子さんを母のように包んでいた優しい人。寝れるようにカスタマイズされた彼女の古い緑のルノーがかっこよかった。

Eourresの村はエコヴィレッジとして、1970年代くらいに各地から人が住み始めたそうで、ある古い建物には、国籍がさまざまな若い人たちがシェアハウスにして住んでいた。その家はキッチンの水道が使えなくて外から汲んでくる必要があったりして、整備が進んでいないために結構大変そうだった。冬に向けて話し合いをしているとも聞いた。もちろんそれ以外にも家はあって、きちんと整った家がいくつもあった。村全体は小さな集落といった感じで、銀行もなさそうだった。ホストの住む場所はyourte(モンゴルのテント)が2つ並んでいて、1つはマリーの恋人、もう1つはパリ出身の男性。マリーの恋人のyourteは原始的で外に炊事場があるシンプルな作り。パリ出身の彼の方は驚きの作りで、中にシステムキッチンと冷暖房が完備された都会の暮らしを守っていた。そして、そのイメージ通りにとても几帳面で潔癖さんだったことを思い出す。何故こんな自然の中でわざわざ暮らしているのか。とても興味深くて面白いなと思った。

お子さんが撮った写真2枚。

このWWOOFのお手伝い内容として求められていたのは、籠作り(これに惹かれて決めた)とアトリエを作ること。実際に行くと、籠作りは体験として一度させてもらった以外は、ほとんどアトリエの壁の漆喰塗りだった。籠作りの最中にざっくり左の手を道具で切ってしまった時、瞬時に蜂蜜とラベンダーオイルで手当てしてもらって、すぐに傷口が塞がったことで知ったことは今でも役に立っている。生の蜂蜜は本当に治りが早い。

私たちWWOOFerのための家があって、数人でシェアすることになっていた。初めは私だけだったのが、すぐに2人の女の子がやってきた。そのうちの1人は確かリトアニア人だったと思う。そして、もう1人の女の子がノルウェー人のマリという、とても印象的な子で滞在中に仲良くなった。マリはほとんど裸足で歩いて旅をしていて、夜には自分のハンモックを吊るした木の上で寝ていた。道によっては必要になる、足を守るための薄い草履だけ持っていたのを思い出す。フランスにはもちろん飛行機でリヨン辺りまでやって来て、後は本当に歩いていたとのこと。18歳のものすごく魅力的な可愛い子だった。3人でカードゲームをしたり、沢山お話をした。マリは数日してハンモックで寝るのをやめて、私のベッドの横で一緒に眠るようになった。そして、朝起きるといつも’どんな夢を見た?’とお互いの夢の内容をシェアしたり、マリのお母さんとお祖母さんがストーリーテラーで彼女もいくつかお話を覚えているというので、そのうちの1つを聞かせてくれたりした。内容は忘れたけれど、チベットの僧侶の話だったと思う。そして日記代わりに水彩画を1日1枚描いていたのも印象的だ。帰国してから3ヶ月後に東日本大震災が起こり、私のメールを受けての返事としてマリから日本の人々や土地の悲しみを癒すような絵とメッセージが送られてきた。本物の妖精みたいな女の子と出会ったことは今でも私の宝物。

リトアニア人の女の子が発ってから、マリと2人になり、長年沢山の人が使い続けて汚れが溜まっていたシェアハウスを徹底的に掃除をした日がある。バスタブなんて酷いものだったが(私たちはそれを使わずにホストのyourte横に作られた屋外シャワーを借りていた)、黙々と掃除をした後は空気が変わってとても居心地の良い家になった。そして潔癖症のホストが家に来た時にその様を見て ‘美しい!’と私たちを褒めながらも、しれっと少しだけズレていた箱ワインの位置を真っ直ぐにしたのを思い出す。そして、ある日はマリと村の中を散歩したりした。散策しているうちに人の家の敷地に入ってしまった時、私たちを見つけた優しい住民さんが何か飲む?と聞いてくれたのに対して、咄嗟に’お湯ください’と言って変な空気になり、後で2人で思い出し笑いをしたり、とにかくお伽話のような時間だった。楽しかった。

マリたちがやって来る前、ホストの友達がパリから遊びに来ていて、半日一緒に近くのAurelという町に行った時の光景が、今でも時々フラッシュバックする。古くて美しい町だった。

どこにいようとも結局はいつも誰かに出会って、想像を超える展開になり、見たことのない景色を見るために連れ出してもらっていたことを思い出す。つまりは自分がそれを起こしているわけで、いつだって唯一無二の稀有な経験になる。それは誰にとっても日常的に起こり続けている。当たり前のことが美しい。

※ 一連の旅の記録は、写真を見て、記憶を辿りながら出てきた光景を出来るだけそのまま表現するようにしています。自分の未熟な心が見せた現実は、今はもうすでに昇華しているので書いていませんが、当時はもっと細かな葛藤がありました。

text & photo by Hisayo

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